無題 3編/北井戸 あや子
信号機の震音(signalとでも、云うか)三角、もしくはサイン
形、波(最後に聴力検査をしたのは、いつだったか)
しらしらした雨が遮断機に重なって、前は幻灯世界のよう(しかし排気ガスを吸い込む幻灯とは、これまた)
遮断機、だなんて、かなしい名前を与えられたもんだなぁと思う
ものがなしいメロディは、もう半ば内耳に溜まって
遮断機はとうに上がっていたのだと知る
(ピパポピした音色)(耳の悪さへ、少しぞっとした)
線路をカンカン叩くヒールについて歩くと
こんなに淋しく、錆びた鉄の香は雨に立った
*
燦々と酸性雨射って、散々
ぎらぎら、両足、群がった見物客
眼が渇いて、乾い
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