ニジのこと/はるな
 
ひかるのを。ひかって、それが終わるのを。かなしくてこわくて、逃げたかった。ひかりおわって、だってそれからは?と思うとかなしくて、その大きな手がここにもこないかと待つのもこわくて、来て欲しくて遠くてさびしかった。
きれいなはんかちみたいに広げられた世界は、いまは旗みたいにばたばた翻っていて、わたしは飛ばされながらみている。さびしさは折りたたまれて、いつかの箪笥にはいった。(引き手に模様の増えていく箪笥)
記憶は解体され、組み立てられる。漂白され色付けされる。音が奪われたのちに与えられる。そして箱詰めされ忘れられる。忘れられてはじめて時間は完全に所有される。
だからこの虹はまだわたしを拒んでいる。
わたしがかつてみた夜を所有してしまわないよう赤白くのこって、ばたばた翻っている。


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