きよらの賦/宮内緑
 

ここには昔きよらがわと呼んだ細流(せせらぎ)があった



なにもしらずにおもいつづけた
 あなたには こよない日々があったとしらずに
なにもしらずにさがしつづけた
 あなたには 涯ないそらがあったとしらずに

 淋しいから想いつづけたのではない
 想いつづけたから孤独だった
 おめかし好きの川蝉や
 凛々しい山翡翠(ヤマセミ)だって飛び込んでくるほど 
 ほんとうは私の周囲も華やいでいた
 眼をみひらいていたのなら

青いわたしは信じつづけた
おもいがつよければかならず伝わるのだと
だからあなたもひとりきりでいると信じた
信じてやまないそ
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