シェルター/汐見ハル
 
春のぬるい風をどうしても愛せない。
凍てついた枯れ枝の尖った輪郭を
冴えた静寂の中を立つ潔癖な冬木立を
ただ耐える以外には何もしないですむ季節を
ぼくは心底愛していたので
ふくらみはじめたつぼみは醜悪で、いびつで、
どうしようもなく吐き気をおぼえる。
いつものように授業を脱け出して
屋上に寝転んでいた。
グレイの空はたしかに昨日の続きだったけど
でもどこかがちがっていて、
透明で見えない部分まで
輪郭がほどけていったのが
なんとはなしにわかってしまって
砂まじりの突風に髪をおさえる彼女に、

死にたいんだ

思いつきでつぶやいたら、

それはつまり
眠って
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