アンサンブル/ただのみきや
ゆっくりと倒れながら水に変わって往く
斜塔のような女の残された吐息のH
アンサンブル――腐敗と悲哀
不協和音と変拍子
即興詩と自殺者の
無限に奥へと重ねられたカンバスの
白さへ回帰できない 傷んだプラムの微笑
忘却の封を切る甘ったるいインド香
目蓋の上でそよぐまだ温かい指先が
バターナイフのように差し込まれ
深みの魚がおびき出される 最初に
声を失くして歌を孕む そして
鳥が墜ちる銀の矢のように すると
わたしは歌うように踊る 炎のように
白い煙と黒い燃え滓を残して ひとつの
――楽曲が終わる
予見できる死のように 尚も 突如として
鳥はさまよい続ける
わたしの空を 高く 遠く
《アンサンブル:2017年10月25日》
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