アンサンブル/ただのみきや
フルート 高く舞い 歌う鳥
音を置き去りにひた走る稲光のよう
冷たい朝明けの空に溺れながら
命からがら 寄る辺もなくふるえ
ふるえながら鳴き叫ぶ――旋律
切れた指先で描いて見せる聾唖の夢
失って探しまわる
なにか わからないまま
即興の内に幻視した
耳慣れぬことばで歌う女 乱れた髪と装い
天からも地からも捨てられた鳥
始まりと終わりのもつれ――旋律
切断された足
掴む形を二度とは持たなくても
感覚だけはひそやかに
考えるより 先に待ち伏せる
いつも突然に
希薄な大気が幾重にも纏わって
霜つく羽根の 凍る瞳の
奥に 消えない 微かな火
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)