ルールとマナー/ただのみきや
 
早朝の駐車場
誰かが捨てたごみ袋を丁寧に
カラスが広げている
コンビニ弁当の容器や紙クズを
ひび割れたコンクリートの上
器用に嘴を使って


秋晴れの清々しい空の下
目ぼしいものはなにもない
お粗末な食卓を後に
悠々と歩き去る 黒服で 
後ろ手にしたようなその姿
車もないのに信号が変わる


人もカラスも食事をする
人の食べ残しをカラスは食べるが
カラスの食べ残しを人は食べない
カラスにはカラスのルールとマナー
人には人のそれがある
カラスには生まれついて人には後づけの


カラスは自分のそれを守っている
人はしょっちゅう破るルールもマナーも

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