白髪の朝/ただのみきや
 
手稲山の頂辺りに白いものが見える
――書置き 今朝早く来て行ったのだ
見つめる瞳に来るべき冬が映り込む
雲間の薄青い空
氷水に浸した剃刀をそっと置かれたみたいに
張り詰めて でもどこか 痺れて遠くなる
一年が老いて往く
艶やかに紅葉を纏いながら白髪を増して
一年二年と数える人もまた老いる
季節の回廊を巡りながら


レコードが回る 繰り返される歌声に
頬杖をついて 煙を見つめるような素振り
どこをどう巡り歩いて来たのだろう
会ったこともない昔のシンガーの歌声を何年も
酒みたいに空気みたいに
猫みたいに抱いたり無視したり
馴染み過ぎている
老いることもない時の止
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