秋の雨/感傷として 五編/ただのみきや
ひび割れ
雨音は止んだが
雨はいつまでも
乾くことのない冷たい頬
満ちることも乾くこともなく
ひび割れている
悲しみの器
天気雨
泣きながら微笑むあなたが
眩しくて 背中を向けた
やがて七色の架け橋鮮やかに
遠く近く 届きそうな明日へ
勇んで振り向くとあなたはいない
今は昔 もういつまでも
覚悟
冷たくされすぎて
色づいた樹々の
くびれに滴る
秋の睦言
諭すように浸みて
固く秘めた 覚悟
通学路
カラフルな海月の傘をさし
熱帯魚たちはフリフリ歩く
街路の珊瑚サワサワ揺れて
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