秋の雨/感傷として 五編/ただのみきや
 
ひび割れ

雨音は止んだが
雨はいつまでも
乾くことのない冷たい頬
満ちることも乾くこともなく
ひび割れている
  悲しみの器



天気雨

泣きながら微笑むあなたが
眩しくて 背中を向けた
やがて七色の架け橋鮮やかに
遠く近く 届きそうな明日へ
勇んで振り向くとあなたはいない
今は昔 もういつまでも



覚悟

冷たくされすぎて
色づいた樹々の
くびれに滴る
秋の睦言
諭すように浸みて
固く秘めた 覚悟



通学路

カラフルな海月の傘をさし
熱帯魚たちはフリフリ歩く
街路の珊瑚サワサワ揺れて
[次のページ]
戻る   Point(16)