ジャンヌ・ダルクの築いたお城 少女Aとテントウムシ/田中修子
見せたげんわ」おばあちゃんの介護の一部をまかされている小学生の私は、そんな風に言ってスプーンで食べ物をおばあちゃんの小さくなった口につっこむ。
おばあちゃんの部屋は、むかしはすてきな魔法の部屋だった。
障子をとおして透き通ってチラチラ白くひろがる陽の光にあたるこうばしいような畳の匂い。朝起きてたたまれ、夜寝るときに敷かれるおふとん。あれはヒノキだったろうか、白めのこじんまりした箪笥。箪笥の着物が入れてある段からは人工的だが清潔な防虫剤のにおいがして、せがむとときおり見せてくれるビャクダンの扇子の、ものすごくくさいようなものすごくいいにおいみたいな不思議なかおり。こっそり私にくれるザ
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