ふたつ 離れて/木立 悟
背を向けた時計との会話
雨のむこうの夜は赤く
音の径を
少しだけ照らす
指の鋏で
切る仕草
切りたいものを
切れない仕草
溝が 淵が
永く暗い 一本の線に立ち上がり
真夜中の鐘を聴いている
焼け落ちる声を聴いている
羽の手のひらが胃の上に重なり
かたちを点滅させながらはばたく
風と苦さ
沈むあたたかさ
くるまれた夜
布の筒の星
指の洞の暗がり
球の宙宇
確かに聞こえていた声が
砂のように遠去かり
消えかけた小さな手の群れが
かすかにかすかに打ち寄せる
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