本/浅見 豊
砂浜
と
そこに咲いた白い花 少女は
けれどどこにもいない
青空に溶ける
風
たくさんの涙を数えた そっと
生まれ
離れる うた
空を流れる月日
水のように冷たい
手 その
身体を突きぬけて行く
優しさと
喜び
かなしさ 指に
触れる
もの
……
呼んで
月
潮の響き
濡れて行く白い裾
やがて夜に眠る
狼の群れ
彼女の母
大地に抱かれて
少女に
月がかかる
─ガチャガチャ
扉が開く
と
朝が来た
明るい
テーブルの上に
林檎
彼女の歯が
がりりと囓る
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