ひとつ のばす/木立 悟
 




触れれば雨の刃
稲妻の涙
ところせましと息ふきかけて
影の無い真昼に指を降ろす



暖かく 冷たく
慈悲もなく 是非もない
ひとさしゆび
ひとりの入れ物



雨また雨
空に立つ空
はざま はざまに
ひらくかたちたち



朝は流れ
こがねは流れる
朝のどこにも
残す跡もなく



手をつなぐものたちの
手だけが曇に映りゆき
埋立地に散在する 真昼の玩具の家々に
夕暮れが少しずつ近づいてゆく



こちらには虹 そちらには霧
人は短く 花は永い
明るく渦まく金緑のなかに
何かが再びまたたきはじめる



手櫛の銀河
水を追い
弱者の軌跡
陽をちりばめて



曇を背負い 羽ひろう径
降りつづける夜をかき分けながら
空を貫くひとつの指の
無数の影をかいま見る
















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