壁にも 空いた、うすぐらい/
光冨郁埜
さとるに語ることができない
気づくよりも重くなった体をひきずって
叫ぶこともできずに唇をかみ
己のやせた胸へと戻っていく
ただこもってしまう日々にまたひとつ空いていく
いつもは隠れている
ふとしたときにその向こう岸をみせてくれる
草地の犬が背をまるめる
壁にも 空いた、うすぐらい
夕暮れに団地に帰っていく
行き場のないランドセルの背
天気雨がふりそそぐ、塀に囲まれて
ジャケットの襟をたて、ゆっくりと天を仰ぐ
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