アフリカの仮面の下で/ただのみきや
 
の瞳の虚空こそ蝕まれた良心の投影
皮膚の下に黒い地図が完成するまで
重い水の足音 異言のように
いつまでも理解のない噎せ返る腐った情熱の
冷め切ったスープからぶるぶると震え
夜明けのように白ばんで行く眼球の
声がいつまでも声にならない夜のまま
羽虫が群れる電球の下にさらけ出された深い陰影
人形みたいに美しくもなく膨れた腹に額を乗せ
司祭よりも呪術師よりも医者よりもしたり顔で
――書き記すこの顔こそ刑罰
永遠に剥がれはしない肉厚の刑罰
十字架や金のカフスのようにどんな時も
光さえあれば輝きを投げ返す文字は冷たい
知的になればなるほど迷信は潜在力を増し
縋る手は水に映る影をかき混ぜて 笑った
ある朝のヒステリー 母乳と糞尿の匂い
ルールは決して明文化されない
そこら中で装っている偶然の的のように
ひとつの死体が満ちては欠けて往く
心臓は赤の他人おまえの手の中にある




           《アフリカの仮面の下で:2017年9月30日》









戻る   Point(8)