サラマンダー/ただのみきや
 



火蜥蜴は
ただのトカゲ
逃げ出すことをやめただけ
愚か者が放った火から愚か者と一緒に
内に湛えた静かな夜を
存分に
ただ
存分に堪能したかった
灰になるまでうっとりと


煽り煽られ恐れて怒り
騒ぎ治まらぬ群衆が
正義の石を拾っては
標的の悪を探している
極めて原始的なミサイルの
革新的な騒音と火花で
なにからなにまでひっくり返す
甘美な集団幻想の
正義に酔った素面(しらふ)には
悪魔のように根源的で
憎むべき原始心像だった
あの潤んだ瞳は
 火を
  破滅を
 孤独を
まるで愛しているかのように
見えたことだろう
夜の水と堕落を湛えた
柔らかな青い壜に
ふと斜めに射した
   あの最後の一瞥は




          《サラマンダー:2017年9月27日》








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