サラマンダー/ただのみきや
 
煽り煽られ踊る火に
鳴りやまぬ枯木林の
奥の奥
紅蓮の幕は重なり揺れて
熾の褥(しとね)はとろけてかたい
静かに 微かに 
波打つ青い心臓のよう
円くなって まどろむ
火蜥蜴は涼やかに
ときおり目――藍で引いた女のような
片目をあけると
      星もない夜を映した井戸


黄金(こがね)の火の粉が天を焦がす
あんぐりと見上げてはハッとして
われ先にと水をかぶる人々
「風よ吹くな
 こっちへ吹くな
夜明け前の濃い闇に身を寄せ合い
炙られて
互いの体臭に悪酔いしていた
「火蜥蜴さえいなければ我々は――
「火蜥蜴さえいなければ世界は――

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