そそぐ しずか/木立 悟
雨が空を噛みつづけ
小さな息をしつづけている
灰の線は明日まで到き
誰が引くのか 誰が繋ぐのか
避ける代償に傷を受け
午後にあいた穴からは
常に朝と夜が見えている
流れ出る銀と鉛と共に
夜は揺れ
朝が近い
傾きは浅く
地を擦る
空の端から地の端へ
金と緑の瀧が落ちる
石壁に斜めに刻まれた文字
いつか四つの数字に変わる
鳥も機械も近づかない
声は球く 空白となり
夕方が夕方を叩く音が
無音の水紋に色をこぼす
霧の棘が立ち
肌は曇る
仮名でなければ表せないもの
いつか暴かれ 消えゆくもの
街灯の光のこだまから
去りつづける背中が生まれ
水たまりを踏み 濡れながら
金と緑に遠去かる
眠くはない 苦しくはない
空は巨きな片目のまばたき
水の記号は絶えることなく
線の引き手に降りそそぐ
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