空のグラス/ひだかたけし
ガラスの外郭が中身を欠いて渇いている
渇き切っている
水はもうない
中身はもうなくなって
シマッタ物 渇いて渇いて
物そのものと化して
グラスの前でわたし
凝固する
浮遊する
傾斜する
恐怖と諦念に陶然と
肉身を喪失した唐突に己たましい
痛くもない痒くもない何も感じない
ただ恐怖恍惚恐怖恍惚
記憶の奥がぱっくり開く
のたうつ魂の力が干からびていく
光景が鮮やかに浮き立つ
[コレがオマエのシタことだ]
視界を覆う夥しい血液の噴出!
そういうことか
昏倒間際
わたしの意識がそう呟く
ー只々もう恍惚と
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