名もなき鼠のように/
TAT
いつも目にすると じっと眺めてしまうポスターがある
それは古い写真のポスターで
エンパイアーステートビルの建設当時の労働者たちの写真だ
高い高い鉄骨に並んで腰かけて
命綱も付けずに笑っている
(安全帯そのものが当時は無かったのかもしれない)
その写真は
いつも俺の生身の心臓を素手でつかむ
命綱もなしに
梅田なんば京都神戸
関西で四支店しかなかった事務所は
数年のうちに百手前まで膨れ上がった
あの頃
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