緑の折り/水菜
柔らかな光が当たっていて
ぼんやり彼女を浮き上がらせているように見えた
垂れ下がる山藤の淡い藤色が
ひかりにあたってきらきらとしていた
私が彼女を久しぶりに訪ねたのは
彼女が最後に送った手紙があったからだった
彼女は相変わらずの達筆な筆運びで
一緒に添えていたのは薄黄緑色の折り鶴だった
そこに一言
いつかまた遊びに来なさいね、春には是非とも一緒に花を植えましょうと、書かれていた
たおやかな藤の花の花言葉は
やさしさ 歓迎 決して離れない 恋に酔う
彼女、彼らの主人が消えたこの部屋のなかで
わたしは、ぼんやりと香がしみ込んだ折り鶴のあとを伸ばす
最後まで、あなたがわたしに伝えられなかった想いがしみ込まれたそれを
とてもさびしくおもいながら
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