踏まれた絵具の朝/ただのみきや
合えない赤と青を孕み続けていた
殺すことはできても
殺すことをしないまま
鳥が 一羽 空を越えた
その時わたしの独り言に神は口を挟んだ
「それでいいのか 」
「かまいません それで 」
だがすでに鳥は越えてしまった
そうして誰もいない海の上
誰も聞かない轟音と
誰も見ない閃光が
孤独の最中に炸裂した
喜びも悲しみも怒りも
なにもない
清々しい朝の
無垢で無言な眼差しの他は
秋口の暮れ方
夕陽を飲み尽くさんとするあの
混濁の色味ぬかるむ深まりの中で
根こそぎにされて尚熟し火照った泥土から
立ち上る 黒い蚊柱のように
見慣れた
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