悪夢/坂本瞳子
 
汗ばむ夜は
また眠れないかと
憂鬱にもなるが
熟睡のうちに寝過ごして
時間を失ってしまうよりは
ましなようにも思える

ふとベランダに立つと
思いの外夜風は冷たく
束の間の避暑に恵まれ
これでまた寝られるのではないかと
安易な考えに陥ったりもする

寝床につくといかにも容易く
裏切られる自らの甘い考えは
薄汚い夢に包まれて
闇に吸い取られ
二度と朝陽を知ることはないほどの
巨大な恐怖に苛まれ
震える夜に変貌を遂げる

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