庭のおかあさん/田中修子
庭の柿の木は ざらりとしたぬくい腕で
小さなころからずっと わたしを抱きしめてくれました
おばあちゃんがわたしを
だっこもおんぶもできなくなったころから
わたしはランドセルを放り出して
庭の柿の木によじのぼっては
ぎゅっとしてもらうのでした
わたしが飽きるまで抱きしめてもらって
飽きて離れてもそこにぜったいあって
ひそやかに 抱けば抱くほど ぽかぽかするね
そのころの わたしが
にんげん から おしえてもらったことは
原爆で生焼けになった人のうめき声
731部隊でひとがひとをナマで解剖した
日本の兵士がおんなのひとを犯しまくった
とか
そうし
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