もう一個の家族というフィクション/銀馬車でこい
テレビの画面に
鏡をはめた馬鹿がいる
お茶の間から
お茶の間を覗けるという
プライバシーの侵害
ニュースが見られないと
不満を垂らすお父さん
お父さんが垂らす
不満の顔は
家族のニュース
今年のボーナスで
壊れたテレビを何とかするらしい
お母さんは
笑みを浮かべる
昨日 泥棒が入ったのだ
兄貴がバットで闘った
お笑い芸人が退散
アナウンサーが消滅
潜在的な家族の人数が減った
兄貴はテレビの向こう側に
もう一個 家族を作ってくれた
たまには 自分たちの家族の生番組を
見るのも悪くはない
兄貴は語っている
打率は低いけど
守備はうまいって
弁解している
俺はそれを信じてあげた
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