骨/ただのみきや
 
しゃ食っている自分を見た


ひとつ 骨が残った
染み出している 時は 透明度が異なって
河底から湧く泉のように
辺りを揺らめかせ
円く 光を遊ばせる
すべて抜けてしまえば
たぶん 生は成就して
現実と創作の
境目は痕もなく奇麗に埋められる
メモリーカードを差し込まれた
ひとつの端末として


腕が窓ガラスを突き抜けた夜
わたしたちは裸のまま
深紅のオニゲシになった
闇から凝視している
盗むことで生活している人々が
血と同じ量のラム酒を飲んでいた
もつれる舌とからまる足で
踊っていた 立ち上がった蛙みたいに
三十年前 京都
死にかけた日にループして
見つめている
ひとつの骨に乗って
蜂と ヒナゲシと
ガラスの欠片を
破壊へと裏返るであろう恐怖の耳を塞いで
笹の葉に乗せ
逃がしてやる
弔うようないつくしみで
マムシに咬まれた
曇り空を湛えた瞳から
ドロリと 骨



               《骨:2017年9月9日》










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