風の痛点/ただのみきや
 
木々が襟を立てて拒む間
風は歌わない
先を案じてざわざわと
意味のないお喋りを始めるのは木
いつしか言葉も枯れ果てて
幻のように消えてしまう
すっかり裸になると
しなやかに 風は切られて
歌い出す
すすり泣くように
他者によらねば現わせない
存在の悲哀を
ほら 鞭のように撓(しな)った枝先あたり
奏でているのではない あれは
己を裂いて
ふるえる声



           《風の痛点:2017年9月6日》








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