さてどうしよう/ただのみきや
 
白い羽根のような雲がゆっくりとほどけ
ひとつの比喩が影を失う
意味からやっと自由になった娘らを
解釈は再び鍵をかけ閉じ込めようとする


ああ自己愛
鏡の中にしか咲かない薔薇よ
瑞々しい蕾が重たげに死んでいる
未来を夢見ているかのように
甘く眩暈する香り
貫く棘の痛みも
古い紙袋に包まれた
幸福の予感の記憶


夜のすぐ手前 一面の芒(すすき)が揺れている
言葉の中ではなくイメージの中で虫は鳴いている


眠れないこどもの深まるほど冴える瞳孔は
生まれたままの月蝕を湛え宇宙と混ざり合う
「月が浮かぶのは心 そこに実体はなく――
そんな言葉をこども
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