夏の夜の底/由比良 倖
午前二時 水溶星の アルタイル ガラスの海に
沈んでいく それを追いかけて 閉じていく私
*
教科書が雨降りの学校が 影が黒板に差して
私は鉄棒の下 花を胸に挿して
先生が絶望を黒板に 増刷していくのを
急に吐き気をもよおしていく 後ろの席の生徒を
黙ってみてたわ 青い風鈴がいくつもぶら下がっていて
鉄で出来たアブラゼミが 夏を
私の夏をリピートさせてたわ
私の重さは周りの空気が支えていて
夏の夜は地軸がすこしずれてて気持ち悪いです
「あのさ、いずれ終わるものになんでそんなに神経を磨り減らして」
「僕の脳内未来記憶は、もう残り少ない。バッテリーは、こんくら
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