夏石女/ただのみきや
 
と固く閉じながら


遠く秋の篠笛 燐光の淡い指先で
頑是ない生の戦慄きを もう 摘みに来て


――さあ往け
天の浅瀬を走って渡れ
凍える気圏をひとり松明のように振り乱し
最後の小さな光片を
血に染まった守り刀のように
冷たくなった乳房におしあてて
渡って往け 愛しき夏 わが母なる石女よ





              《夏石女:2017年8月30日》











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