肉体労働/葉leaf
 
分け、実に触れることで臓器に触れる。果樹園を歩き回ることで人間の内部には新しい風が吹き、果樹園で労働することで人間の内部には血がよく巡る。果樹園の広がりは人間の内部の広がりと等しく、果樹の数だけ人間の内部には骨格が宿る。果樹園の収穫が終わると、人間の内部の収穫も終わり、いくつも沙漠が消えている。

関節と筋肉は新しい感覚器官となり、見果てぬもの、聴き果てぬものまで感覚する。労働において頻繁に回転や収縮を繰り返すことで、その運動のさなかに新しい感覚を巻き込んでくるのだ。例えば脳髄を真っ白に染め上げるような感覚や、血液を大河へと導くような感覚が、関節や筋肉には降ってくる。果樹をもぎ取る一連の運動や葉をかき分ける一連の運動、その具体的な身体の運動に伴って、形容を超える感覚が人間を満たしていく。

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