初秋/本田憲嵩
湖畔の公園
鬱蒼とした森の道
イヤホンの耳栓で
外界を遮断しながら
今日もコーヒーショップで
光熱費と時間を減らし終えたのち
その黒く湿った撓垂れから
さらに咽る風を送る
帽子を目深に被りながら
求道する虚無僧のようにひたすらに歩く毎日
その男の殺風景を映し出す眼に
かろうじて色彩を与えている
鮮やかなコスモスや毒々しいダリアの類
もはや
さびしく物思うことにすら麻痺しつつ
ジレンマの夏の森を通り過ぎた男
ゆえに盗み見る
熟れすぎて垂れ下がった瓜ふたつ
ゆえに盗っ人の手のすばやさで食べる
他人の家の庭の
イチイの赤く甘い実 萎びきったグズベリー
その後方から
せかせかとした走り方で急に通りすぎてゆく
自転車と灰色の犬
彼を意図せずに急かす
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