脱皮/ただのみきや
蛇(わたし)は脱皮した
相変わらず蛇(わたし)のままだったが
少しだけ清々しい
肌感覚で世界を捉えている
かつて外界と接し敏感に反応した
主観的感覚と一体だったものが
いまは客観視できる
風に揺れ 光が透ける その様を
手も足も出ないのは
蛇(わたし)だけじゃない
傍観者ではなく観察者として
神官の筆記体のように
二枚舌のようで根っこは一つ
乾く暇もないほど空気を舐めて
言葉は持っていないいつまでも
絡みつくデジャヴのように
蛇(わたし)は脱皮した
相変わらず蛇(わたし)のままだったが
目の前の抜け殻が誰のものかなんて
本当は定かじゃない最初から
ただ少しだけ清々しい
肌感覚で世界を捉えていた
抜け殻を着て誰かが泳ぎ出す
勝手にすればいい
《脱皮:2017年8月23日》
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