彼岸花/あおい満月
 

(ここは死後と現世の仲介の場所なのさ)
魚たちが笑う
私はどうしてこんな場所に来てしまったのだろうか
(皆、おまえに会いたがっていたのさ)
私はもう長いことお墓参りに行っていないことを思い出した


(おまえの手の中のその花を手向けよ)
魚たちに言われるがまま私は祈りながら
花を足元に手向ける
真っ赤な彼岸花だ


すると、
一瞬強い光の後に
視界は一面真っ赤な彼岸花で埋め尽くされた
あたたかな風が吹き抜ける
祖父母が手を振っていた


蝉しぐれが
時間の輪郭をなぞっている
晴れた空に降る雨と
厚い雲に架かる虹に
遠ざかる夏を受け入れるトンネルを見た


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