ある感覚の喪失/ただのみきや
 
  乱雑に積まれた古本の階段をうっかりと
 踏み外して雪崩る時間
目眩き
感光した 
 若き夏の日の窓辺
   白く濁る波の音 
         瞑り流されて
     大好きだった 
 身勝手すぎる
     想いをふつふつと使い果たし
   黙すしかなかった
      甘すぎるソーダ水の青さ
     透かしてなにが見えたのか
    セーターを着た後ろ姿
     枯葉とブロンズ像の道
         塗り変えられた季節の   
            絵具が溶けて混じり合う
   ゼロと無限の間
架からない橋の袂で眼球を洗った
 
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