父のことなど/為平 澪
りました」と言い放ったが既に六か月前、精神科医が父に「肝臓の悪化による記憶障害」と診断しており、父の意識障害がカルテに記載されていた。
最期の日、個室に移動させられた父のベッドのすぐ下に「ビタメジン静注用」というショッキングピンクの水溶液が残る小瓶を発見。 カルテの開示の時、私はあの禍々しい色が気になって目の前の事務員の男性に「ビタメジン静注用を投薬したのはいつですか?」と聞くと、男性はすぐに主治医に内線で連絡をとり、「四月十四日です」と答えた。それは父が亡くなった日。カルテの記録に「ビタメジン静注用」使用の記載は一切されていない。父の葬儀三日後、「病院を変えて肝炎の菌が全て消えた」と、父と
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