至福の鹿/ヤスヒロ ハル
 
ぼくとぼくは核融合を起こし

世界は

光に

淡く優しい光になった

それから ぼくは言葉になった
始めに言葉ありき、は真であった

そしてぼくはぼくの細胞を駆使して

一編の詩になった

今まさにあなたの読む、この文章に

恐らく読むたびに細胞の入れ替わる

この一編の詩歌に


そうして

いま、あなたに読まれたことで

ぼくは所有された!

グランドキャニオンに溶けた卵の鹿は
もはやあなたのものだ
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