夏の幸福/ヤスヒロ ハル
 
海水の上澄みが

湯葉のように纏まり

ヒトデ型にくり貫かれ

それを渡り鳥がくわえて

南の方の国境へ

ぽとりと落としました

すると、そこからにょきにょきと

裏の貼っていない鏡が伸びてきて

西の国と東の国を写し返しました

それまで争っていた両国は

国境が

反射しているのか透けているのか分からず

混乱し、後にばからしくなって

とうとう和解しました

そこで記念に鏡は粉々に砕かれ

その破片は夜空に帰りました
しばらくは北を指し示したりなどしましたが
月が満ちたり欠けたり忙しないので

ヒトデの波は海に戻り

たゆたいたゆたい眠りました

地表では和解した二つの国の男女が

海水浴へ行こうと

夜にたゆたい 話すのでした
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