おかし詰め合わせ/ただのみきや
*名を呼ぶ
名を呼ぶ
ここにいないあなたの
井戸へ放った小石のように
真中深く 微かに響き
瞑っても
抱き寄せることはできず
こみ上げる揺らめきの
糖衣はすぐに消えて
胆汁のような酸い苦み
――そうしてまた
名を呼ぶ いつまでも
ここにはいないあなた
*今夜海の方で
今夜海の方で花火をやるらしい
夜空を彩るでっかい花が
バーンと開いてチラチラ散ると
いったい幾つの瞳の中
小さな花が咲いたり散ったり
夜もすっかり更けた頃
背負(しょ)われたこどもの夢にも開く
今夜海の方で花火をやるらしい
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