■/るるりら
連綿と うけつがれてきた舟箪笥は
表の扉を開けても 次々と扉や引き出しが現れ
忍者屋敷のように 底板こそに 隠れされた空間があったりする
舟が沈んでも 大切なものが収納され金庫として利用されていた
この箪笥だけは 海に浮くように設計されているらしい
どこからか
せせらぎの音がする
おもえば
多くの引っ越しを経験した箪笥だが
なぜかいつも せせらぎの近くにこの箪笥はあった
いまの家も近くには 小川がある
ただ 日照りがつづいて すっかり水が枯れている
あれ?せせらぐ
水音は、箪笥の中からのようだ
潮の声が聴こえる
幽霊船のようなはずの遠い郷里
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