遠くへ/藤鈴呼
そのまま 静かに 影を閉ざして
見えなくなるくらいまで
夕餉の時刻が近付けば 聴こえ始める
蜩の かなかなかなかな
タイピングの音と 何処か 似通っている
唇の端を歪めながら 自嘲気味に微笑う
あなたの表情にも 似ている
照り付ける 焦れた灰色から零れだす光
歩いてみても 足跡を探しても
全てが 繋がって行くことが 滑稽で
抜け出せない トンネルの向こう側
爆破する程の勇気は ない癖に
朝焼けまでは 待てないのだから
月の女神に 少しだけ 心 救われる
一枚 二枚 数え始めれば キリがない
遠くへ 行きたいけれど
船が 見つからないの
壊れたオールを抱えながら
唯だ 泣いている
とても 静かな声が 聴こえる
かなかなかなかな
変換できぬ程の 高速で認めた文字の向こうに
隠れてしまうくらいの
小さな つぶやき
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