遅行/草野春心
 


  なにかに 置いていかれてしまった
  わたしらがわたしらでなくなるまで
  ひとかけのクラクションは膨らみ
  小さなまま大きくなった

  波を待つ肢体のような
  五月蝿さがだまになって居る
  思考の、ふべらんとした……浜
  編みあげられていたはずの 時まがいの時

  本当はわたしらでないのだが
  わたしらはわたしらをやめれない
  素早く滑らかになにかがわたしらを
  追い越して 光っている それだけは見えない


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