赤い服/春日線香
わたしがわたしのことを考えていると
障子がすーっと開いて誰かが入ってくる
いつか夢で会った人のような気がする
上から下まで赤い服を着ているので
目も眩むような思いで
何も言えないでいると消えてしまった
言葉を武器にしたつもりはなくて
ただ小さな風船で遊んでいるうちに
鋤でかき出されて連れてこられた
この人気のない屋敷で
壁や床に浮かぶ染みを見ていただけだ
子鬼の踊りを見ていただけだ
空には大きく火星が浮かび
どんな光も真っ赤に染まってしまう
やがて赤い服を着た誰かがやってきて
ここには誰もいなかったんだよ
と言う
ここには誰もいなかったんだよ
と嬉しそうに言う
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