明け方のセーブポイント。虚無の果てに。/倉科 然
初夏の夜風、湿気と都会のノイズ
この中には諦めが満ちて
もうダメだって声が反響して、私は耐えきれず
いや私自身の声かもしれないそれに耳を塞いで
帰路につく
満員電車でボリュームを絞った音楽を聴いて
外から入り込む声に耳をすませる
自分が自分自身が発していた声だと気がついて
逃げ場を失って
この夏のその先に失望して
それでも今の自分を完全に否定する勇気もなく
ここでは終われない
そんな気持ちをぬぐいきれなくて
満員電車を降りると私はイヤホンを外して
明日の勇気とは呼ばないような、しかし、大切な思いを抱えて
明け方の街を歩き出す
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