ひとつ のぞみ/木立 悟
何かのかたちが傍らを落ち
遅い影がそれにつづく
眠りのなかの冷たい放出
幾度も幾度も繰り返す非
直ぐの水と曲がり水
ひとつのかたちを拒みながら
蒸した原と土の香の渦
海への坂を下りてゆく
底を得たら底のように
無いものを在るようにしたりせずに
どんなにどんなに足掻いても
左耳は右耳になれないのだから
鉄の筒より 木の筒がいい
木の筒よりも紙の筒がいい
でも誰ひとり ほんとうを言わない
布の筒は すぐに汚れる
夢の十五と現の二十
ひとつの指の上の千年
沼地には羽
暮れ色の羽
錆びた思い出を
素手
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