ふるものは/浅見 豊
さきほどから
ちりん ちりんと
私の耳に響いていたものは──(どしゃどしゃと)
あれは空一面を覆った、暗く──(それはもう)
重く、どこまでも垂れ込める──(地面はぬかるみ)
──低い雲の中で──(どしゃどしゃと)
静かに静かに形作られていったいくつもの結晶体です──(どしゃどしゃと)
(独り)
(歩き)
(涙して)
(見上げる)
(空の)
(冷たさよ)
その音色は
雲と私との間に
けれど静かに響くのです
*
ふわ ふわ と
ふわ
ふわ
と
ふる
差し出せば手の上に
降りかかる
ふと──
触れた 手
─tiens(ほ ら )
comme ça(こ ん な に )
ふるものは
きよくあれ
愛するものは
うつくしくあれ と
願う
戻る 編 削 Point(2)