ひとつ 描く/木立 悟
冬が冬を抱くかたちから
噴き出るように羽は生まれ
冷えるばかりのけだものの声
一本の線に遠のいてゆく
永く細い針の重なり
薄く紅い流れのひろがり
目を閉じ ひらく日々のなか
目を閉じる数が増えてゆく
空の半分は海になり
庭は湖に削られている
夜の泡が戸口に集まり
聞きおぼえのある声を土に置く
風に軋む夜の樹が
常に背後に揺れている
枝と枝のはざまから
枝のかたちの暗がりがこぼれる
夜は明るく
負は耐え難く
時は時に落ち
白の紋をひらきつづける
遠い陽を向き 波を漂い
花の手が 羽の手が
夜と夜明けのどちらにも
水の径を描いてゆく
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