透明な統計表/前田ふむふむ
 

夕日にむかって
繁茂している        


耳の中で沸騰している
熱気をあげて
海の 魚を待つ人たち


その市場を
通った 冷たい風が
だれもいない街の
剥がれかけた
バス停の時刻表を
ゆらしている 


木棺のなかの
きみたちは
いつも 熱狂的だった
あたたかい血は
雨に すこしずつ
冷やされて


小学校の 体育館で
片づけそこなった
椅子が
山積みにして
置いてある


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錐のような声
それは切望だっただろうか
かつて
希望と安住の地であった  
川面に
身体を休めている
傷ついた水鳥の群れ

やがて
空に一羽ずつ
飛散する
皮膚を斬るような
声をあげて
世界の冬に
翼を
むけている

いくべき場所には
数字を
ひとつひとつ
背負っていくだろう

記憶しよう
枯れきった
空と海と大地と
その間にある
昼と夜のひかりと影を










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