小説家小説/水宮うみ
 
えず、夕方なので犬の文庫を散歩に連れていってやらねばならない。そう思って玄関に向かう。すると、窓の傍でうとうとしていた文庫がしっぽをヘリコプターみたいにして近寄ってくる。
はふはふ言っている文庫に首輪をつけて、外に出た。
海のザザァという音が微かに聞こえる。文章の家は海のすぐ近くだ。
文章は、手書きで小説を書いている。何故かと問われてもよく分からない。あえて言うなら昔からそうやって書いてきたからだろうか。
文章はもう若くはない。老人と言って差し支えない年齢だ。最近散歩を長時間するのが、少し辛くなってきている。
さて、自分が書いている存在だとは言え、文字は手書きで小説を書くことに、どん
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