小説家小説/水宮うみ
た。
「いつも綺麗な文字をお書きになりますね」
こう書いてあった。見られていたのか、と少し恥ずかしくなったが、それよりも、その筆跡が美しいとは言い難く、書いている内容とは真逆でなんだか笑ってしまった。
『私、分かった。手書きで文章を書く意味。手書きで小説を書く人はきっと、世界(インターネット)より、目の前の君に、自分の筆致の文章を、直接読んでほしいんだろうね。たくさんの人に見て貰うより、今この瞬間、大切な『あなた』に読んでもらうために、小説を書く。それはどこか、物語を介したラブレターに思える。パソコンに打ち込んだ文字はいくらでも複製できるけど、手書きではそれはできない。もしも仮にこの世界が文字で記されていたとして、パソコンと手書きどっちで書かれていたほうがいいかと言えば、下手くそでいいから手書きで書かれていたほうがいいって思わない?
手書きにはきっと、唯一無二の愛情を込めることができるんだよ。』
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